イジワル上司と秘密恋愛
あんなにこの人から離れたいと思ってたのに、思いもしなかったこんな形で別れが訪れると、途端に心が弱くなっていく。
「綾部さん……遠くへ行っちゃうの?」
ベッドから立ち上がった私は、素肌のままなのも気にせず彼に縋るように抱きつく。
「ああ、行くよ。けど、志乃のことも離す気はないから話し合いたかったんだ。このまま遠距離で付き合うか、それとも志乃も異動願いを出してそのうち関西に来るか」
「急に言われても……」
「うん、そうだよな。だからよく考えて」
動揺して抱きつく私の髪を、綾部さんは落ち着かせるように撫でながら話す。
けれど突然の話すぎて、頭の中は全然まとまらない。
遠距離恋愛? 私も関西へ行く? 綾部さんのために?
ずっと関東で育ってきた私には即決できる問題じゃない。それに、私は総合職ではなく一般職だ。だから例え異動があってもそう遠くはないと思ってたし、覚悟もしていなかった。
色んなリスクを負ってでも、私は綾部さんを追うべきなんだろうか。