イジワル上司と秘密恋愛
何度だって夢に見る、あのキスを。無骨で長い指先が髪を掬い、「好きだよ」とささやいて口づけを落としてくれた夜を。
抱かれたい、キスされたい、愛されたい。——会いたい。
狂おしいほど彼への思いが募る度に、いっそ私も関西まで追いかけてしまおうかと衝動的に思ってしまうけれど、結局は
——行ったところで、所詮私は恋人じゃないから。
そんな当たり前な虚しさが、私の理性を留めた。
近くにいようが遠くに行ってしまおうが、結局私のものにはならない人なんだ。
それがこの燃えるような想いの行き着く先で……もう私にはどうしようもないんだと無力感さえ感じながら日々を過ごした。
そんな、ある日。
「お、懐かしいもん出てきた」
企画発表会議の準備で残業していたとき、野崎さんが楽しそうな声で呟いた。そして、私や柳さんのチームメンバーに向かって振り向くと
「ほら、これ去年のコンペのときの写真。懐かしいなー、社内報に載せるとかで俺が撮ったんだっけ」
そう笑って、自分のパソコンのモニターを指差した。