イジワル上司と秘密恋愛
「もう、野崎さんってば。遊んでたら終電間にあわなくなりますよ」
柳さんがお説教しつつも野崎さんのパソコンを覗き込む。他の人達もちょうど息抜きしたいタイミングだったのか皆集まってきて、私も自分の手を止めてその輪に加わることにした。
画面にはコンペ会場の写真や担当したチームの写真が数枚表示されていて、ゆっくりと自動で再生されている。
「ワイン事業部と競ったけど、結局うちが勝ったんだよな、これ」
「そうそう、綾部さんのプレゼンが良かったもんね」
皆の会話でふいに出た綾部さんの名に胸がかすかにドキリと疼いた。
それと同じタイミングで、画面には綾部さんのプレゼン時の写真が表示される。
思わぬところで目に出来た彼の姿に、私はまだぬぐいきれない切なさと嬉しさを感じてしまう。
すると、ゆっくりとフェードで切り変わり新しく表示された写真に、私をはじめそこに居た人たちが皆少し驚いた顔をした。
「なにこれ?」
柳さんの問い掛けに野崎さんは画面を見やってから答える。
「ああ、これ綾部さんち伺ったときの写真だ。コンペの記事と一緒に綾部さんのインタビューも載せるって言うからさ。せっかくだからプライベートの写真も撮らせてもらったんだけど、結局使わなかったお蔵入りのお宝写真ってやつだね」
野崎さんのそんな説明に、数人は綾部さんのプライベートに関心を示し、数人は眉をひそめ画面から目を逸らした。
私も画面を見入りつつも思わず顔をしかめてしまう。なぜって。
「これ……なんですか?」
「ヒョウモントカゲモドキ。綾部さんのペットだよ」
モニターに映る写真には、ニッコリ微笑む綾部さんが手に15センチはあるだろう黄色いトカゲを抱いていたのだから。