イジワル上司と秘密恋愛

「いや、綾部さんもそれは分かってたよ。だからこの写真使うのも反対してたんだけど、俺が無理に頼んだだけなんだ。ボツになって綾部さん『俺は好きだけど、こういうの嫌う女子は多いから使われなくて良かったよ』なんて言ってたし。だから普段も秘密にしてるってさ。なかなか家に人が呼べないのが悩みだなんて笑ってたけど」

私がトカゲを気持ち悪がると思って気を使って話さなかったんだろうか。野崎さんの話を聞いてそう考えるとちょっと安堵した。

「そこまでして飼いたいなんて、綾部さんてよっぽどトカゲ好きなのかしら?」

理解出来ないといった表情の柳さんに、野崎さんは苦笑いをしながらモニターの写真を閉じる。そして。

「飼い主としてはすんごーく可愛いらしいよ。俺も家で直接見せてもらったけどさ、『うちのマリは目が大きくて美人なんだよ』『マリは背中の模様が特別にキレイなんだよ』なんて惚気られちゃって。あれは親バカってやつだね……っと、今のは言い過ぎた。ナイショね」

冗談めかして笑った野崎さんの言葉に、私は耳を疑った。

「え……今、なんて?」

「いやいや、志乃ちゃん。だから今の親バカってのはナイショって……」

「そうじゃなく、あの、綾部さんのトカゲの名前」

「え? マリ? ヒョウモントカゲモドキのマリリンちゃんだよ、たしか」

「……はぁ!?」

不躾な驚きを、声に出さずにはいられなかった。
 
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