イジワル上司と秘密恋愛
Side AYABE
【Side AYABE】
「春澤のこと、明るくて妹みたいで可愛いなってずっと思ってた。けど今日、お前の泣き顔見たら……なんていうか、すごく大切にしてやりたいなって思ってさ。『あー俺、春澤のことが好きだったんだ』って、自分の気持ちに気づいたんだよ」
ミントを浮かべたバーボンのグラスを揺らしながら喋ると、大人げなく照れている自分の声が、氷のぶつかる硬質な音に少しだけ誤魔化されるような気がした。
三年ぶりに胸を疼かせた恋の相手は八つも年下で、綺麗な黒髪と大きなアーモンド型の瞳を持った女の子だった。
企画マーケティング課では一番下っ端なのを気にしてるのか、いつも朝早く出社してフロアの掃除をしたり、積極的にヒアリングに行っては人一倍アイディアを出したりしていて、そんな必死な姿が可愛いと、今までは微笑ましく思っていた。
けれど今日の昼休み、偶然にも非常階段の踊り場に出て行く彼女を見つけ、不思議に思って追いかけた先で——意外な姿を目にしてしまう。
『……悔しくないし……全然悔しくなんかないし……』
いつもは明るい春澤が、グスグスと鼻をすすり上げながら一生懸命自分を奮い立たせようとしている健気な姿に、胸の奥が懐かしい疼きを感じた。
そして、慰めようと声をかけた俺に、いっぱい涙を溜めたアーモンド型の瞳で強く見据えながら『泣いてませんってば!』と虚勢を張った春澤の姿は、強く俺の心を掴んだ。
「春澤のこと、明るくて妹みたいで可愛いなってずっと思ってた。けど今日、お前の泣き顔見たら……なんていうか、すごく大切にしてやりたいなって思ってさ。『あー俺、春澤のことが好きだったんだ』って、自分の気持ちに気づいたんだよ」
ミントを浮かべたバーボンのグラスを揺らしながら喋ると、大人げなく照れている自分の声が、氷のぶつかる硬質な音に少しだけ誤魔化されるような気がした。
三年ぶりに胸を疼かせた恋の相手は八つも年下で、綺麗な黒髪と大きなアーモンド型の瞳を持った女の子だった。
企画マーケティング課では一番下っ端なのを気にしてるのか、いつも朝早く出社してフロアの掃除をしたり、積極的にヒアリングに行っては人一倍アイディアを出したりしていて、そんな必死な姿が可愛いと、今までは微笑ましく思っていた。
けれど今日の昼休み、偶然にも非常階段の踊り場に出て行く彼女を見つけ、不思議に思って追いかけた先で——意外な姿を目にしてしまう。
『……悔しくないし……全然悔しくなんかないし……』
いつもは明るい春澤が、グスグスと鼻をすすり上げながら一生懸命自分を奮い立たせようとしている健気な姿に、胸の奥が懐かしい疼きを感じた。
そして、慰めようと声をかけた俺に、いっぱい涙を溜めたアーモンド型の瞳で強く見据えながら『泣いてませんってば!』と虚勢を張った春澤の姿は、強く俺の心を掴んだ。