イジワル上司と秘密恋愛
処女だったことを考えると俺が初めての恋人なのかもしれない。
いきなり告白され早急に身体を結ばれてしまって、恋愛経験のない志乃はずいぶんと戸惑ったはずだ。本当に俺を信じていいのか未だに不安で。
だから、意地を張って、ヤキモチを焼かせて、離れる素振りを見せて、こちらを試しているのかもしれない。『これでも綾部さんは私のことが好きなんですか?』と言わんばかりに。
そう考えると、彼女に愛を紡ぎ続け安心させてやるのは、八つも年上で彼女よりははるかに経験豊富な俺の責務だと思えた。
ひとまず、お見合いの男とは関係を断たせた。何か問題があれば俺が矢面に立つ覚悟は出来ている。
「さて、と。今からでも予約取れる旅館を探さなくちゃな」
その代わり、志乃を旅行に連れて行くと約束したことを思い出し、俺はマリリンに餌を与え終えるとテーブルの上のノートパソコンに電源を入れた。