イジワル上司と秘密恋愛
結局。
肝心の話も出来ず、志乃を素直にさせることも出来ないまま夜は明けてしまった。
AM五時。
いい歳をして恋のひとつも思うようにいかない自分に嘆息して、まだ眠り足りない身体をノロノロと起こし一旦帰宅するために身支度を整える。
それでも、伝えるだけは伝えなきゃならないと思い、まだベッドで半分夢見心地の彼女に向かって声をかける。
「……本当は改めて、もっときちんと話したかったんだけどさ。俺、来月急遽異動になるかもしれないんだよ」
「え?」
さすがに驚いたのか、志乃は頭を起こして髪をかき上げながらこちらを向いた。
さらに、ことの経緯を話すと志乃はあきらかに顔色を変え、何も身に付けていないにも拘らず、無防備に裸体のまま俺に抱きついてきた。
「綾部さん……遠くへ行っちゃうの?」
その動揺した様子に、心の奥で安堵と幼稚な喜びが芽生える。
どんな態度をとろうとも、やっぱり志乃は俺のことが好きなんじゃないか、と。
けれど。