イジワル上司と秘密恋愛
ただ、時間が過ぎ気持ちが落ち着いてくると、やっぱり俺は志乃が好きだったんだなという想いだけはハッキリ認識できた。
『こんな恋したくなかった』とまで言われたときには落胆ばかりが大きかったけれど、今となってはあそこまで彼女に言わせてしまった自分に罪悪感が沸く。
きっと初めての恋愛だった女の子に、安心も満足もさせてやれなかった自分がふがいない、と。
「……可哀想なことしたな」
部屋でひとり、あの夜のことを思い出してポツリと呟くと、ケージの中のマリリンがこちらに顔を向けてじっと見つめてきた。
「なんだ、心配してくれてるのか?」
大きな瞳で愛らしく俺を見つめ続けるマリリンにふっと微笑み、指先で背中を撫でてやる。
「結局お前のことも紹介してやれなかったな。ごめんな、マリ」
背を撫でられ気持ち良さそうに目を細めたマリリンに語りかけながら、
「……ああ、でも」
と、今さらな躊躇がよぎる。
「会わなくて良かったのかもな。もし『なんでマリリンなんですか?』なんて聞かれたら、また志乃を怒らせてたかもしれないし」
もうする必要もなくなった心配に苦笑し、俺はマリリンを手に乗せケージから出すと、もう一度黄色い背を撫でてやった。