イジワル上司と秘密恋愛
——けれど。
東京の事業所のときと違って、今や部長になった綾部さんとは仕事のときでさえあまり接する機会はない。
直属の上司は新海さんなのだから、事業部を統括する綾部さんに私が直々に何かを話にいくことなど皆無だ。
せめて昼休みや始業前ならと思っても、やはりこちらの事業所でも女子社員に人気の高い綾部さんの近くには誰かしらいることが多く、なかなかタイミングが掴めない。
そんなこんなで気持ちは逸るばかりで二週間が過ぎ、業を煮やした私は終業後に会社の近くで綾部さんを待ち伏せることにした。
……元カノが遠い異動先まで追いかけてきた上、待ち伏せだなんて。なんだか私、ストーカーみたいで嫌だな。けど、こうでもしないと話も出来ないし。
そんな複雑な思いで会社から駅に繋がる道中にあるカフェで窓際に席を取り、綾部さんが通り過ぎるのを待っていたときだった。