イジワル上司と秘密恋愛
女性にモテる綾部さんに新しい恋人がいるかもしれないことは予想していた。けれど、もしそうだとしても、私は私の気持ちにけじめをつけたくてここまで来た。
なのに——話も謝罪も出来ず、赤の他人のように関心すら向けられず、あげく恋人に戻ることはない現実をつきつけられて。
私は何のためにここまで頑張ってきたのだろうと、どうしようもない虚無感に襲われてしまう。
綾部さんたちと同じ駅を使う気にはなれなくて、遠回りをして別の駅から帰ってきたときには、時間は九時を過ぎていた。
なにも食べていないのでお腹が空いているはずなのに、夕飯を食べるどころかなにもする気がしない。
私は部屋に上がるとベッドにカバンを放り投げ、その隣に自分も寝転んだ。
「私、なにやってるんだろ……」
一年半の反省と努力がなにも成せないまま終わろうとしている現実はあまりにも重く憂鬱で、もうこのまま目を閉じて全てがリセット出来たらいいのにとさえ願う。
着替えもせずメイクも落とさないまま、私は現実をシャットアウトするように目を閉じてそのまま眠りへと逃げ込んだ。