イジワル上司と秘密恋愛
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『春澤にどんな事情があろうと関係ない。俺が春澤を好きでいる限り、絶対あきらめないから』
その日の夜夢に見たのは、一年半前の出来事だった。
私が勝手に綾部さんを誤解していたこと、彼に謝って気持ちにけじめをつけるまで誰とも付き合わないこと。それらを説明し『だから……本当にごめんなさい』と深々と頭を下げた私に、木下くんはそう告げた。
何度も何度も彼の気持ちを受け入れようとしては結局綾部さんへ戻ってしまう不誠実な私に、それでも木下くんはあきらめないと言う。
自分のずるさが嫌になって、どうしてこんな私を好いてくれるのかと尋ねたら、木下くんは慰めるように私の頬を撫でてから言った。
『春澤はずるくなんかない。俺を弄ぼうとしてるならこんなに悩んだりしない。真面目で不器用だからこそ春澤は上手くいかなくて苦しんでるんだ。俺はそんな一生懸命なお前のこと放っておけないよ』
あまりにも真っ直ぐな彼の誠意が痛すぎて、涙が零れてしまう。
『泣かないで。俺がちゃんと春澤を幸せにしてあげるから』
切なそうな笑みを浮かべて涙を拭ってくれた彼に、そのまま全てを委ねたくなってしまうけれど——
『そんなの駄目。私を甘やかし続けたら木下くんが幸せになれない』
——その想いが誠実だからこそ甘えられないと、私は彼の手をほどいた。