イジワル上司と秘密恋愛
「……夢……か」
窓から射しこむ朝の光で目覚めた私は、夢に見た過去に切なく胸を痛ませる。
あれから連絡もしなくなってしまったけれど、木下くんは元気でやっているだろうか。
全てが上手くいかない今となっては、綾部さんを追いかけようと決意したのは間違いで、あのまま木下くんと一緒に居ることが正しかったのではと一瞬よぎるけれど……。
「馬鹿みたい……。私、成長してないなあ」
何度も後悔した自分のずるさにまた捕らわれそうになり、かぶりを振りながら呆れた自嘲を零した。
***
前々から覚悟していた通り、新年度のスケジュールが動き出すと新しい事業部での活動は多忙を極めた。
従来のマーケティングだけでは新しいコンセプトにあった情報は集めきれず、自らデータを収集する必要があった。ヒアリングに駆け回り、広報に新しいアンケートを提案し制作し、ゼロからデータベースを作り上げていく。
ブレストに出すアイディアも以前居た事業所のときの倍近い数が求められ、私の頭の中は眠ってるとき以外は常にアイディアを考えているようになった。