イジワル上司と秘密恋愛
けれど——そんな燻りはこの日を境にしょっちゅう起こりはじめた。
デスクに物を置くと紛失することが度々あった。特に貴重品や重要な書類であればあるほど。
疑いたくはないけれど、こう何回も続くと同じフロアの人のしわざかと思ってしまう。
ところがそんなことが続いた数週間後、もっと私を戦慄させる出来事が起きた。
「なにこれ……」
アパートのポストに不気味な封書が投げ込まれていたのだ。印字された宛名に差出人は不明。恐る恐る中身をあけてみたら……中には『死ね』とだけ書かれた紙が。
ゾッと鳥肌が立って、思わずそれを外のゴミ捨て場に投げ捨ててしまった。
「なんなのこれ……気持ち悪い」
誰かの嫌がらせだろうか。けれど、全然心当たりがない。
親元から遠く離れ、兵庫へ来てからまだ頼れるほどの友人もいない環境で、私は会社でもプライベートでも起こる不気味な出来事に心細く怯えるしかなかった。