イジワル上司と秘密恋愛

——誰かに頼りたい。出来れば……綾部さんに。

彼に頼ることが出来たらどんなに心強いだろう。けれど、結局私は綾部さんと未だまともに喋ってもいない。あのエレベーターで言葉を交わしたきりだ。

どうしよう、相談したら迷惑かな。でも……。

そんな風に、また終業後に思いきって待ち伏せしようかと考えていた日のことだった。


「春澤、何か悩みでもあるんか？」

リフレッシュコーナーでひと休みしていた私に、新海課長が声をかけてきた。

「課長……」

「最近浮かない顔してるなあと思って。何か困ってることがあるんなら相談のるぞ。あんま頼りにならんかもしれないけど、これでも一応上司だからな」

気さくな新海さんは明るくそう言って、私を励ましてくれる。

少し迷ったけれど、今の私にはかなり身近な存在である直属の上司に頼ることは間違ってない気がして、思いきって打ち明けることにした。


「そりゃあ穏やかじゃない話だな」

話を聞いた新海さんは眉間に皺を寄せ「うーん」と困ったように呻いた。

「会社でも家でも見張られてるみたいで、気が休まらなくて……」

最後にそう付け足した私に、新海さんは顔を上げて真剣な表情で言った。