イジワル上司と秘密恋愛

なんだか新海課長のせいで、綾部さんに相談しようと思う気持ちも失せてしまった。

もしも彼にまで『関東に帰った方がいい』なんて言われたら、立ち直れなくなってしまう。

身の安全を考えてくれるのはありがたいけど、一年半努力してここまで来たのに嫌がらせに屈してスゴスゴ帰るなんて絶対に嫌だもの。

こうなったら自衛に努めるしかないと思い、会社ではデスクに鍵をかけ貴重品は必ず肌身離さず、家ではドアや窓に防犯ブザーを付けるなど、出来ることを始めた。警察にも一応相談にいったら、パトロールのコースに入れてくれるとのことだった。

その成果があったかどうかは不明だけど、しばらくはこれといった被害が起きることがなく数日が過ぎた。


けれど——まるで安堵した私を狙うかのような事件が起きる。それは、朝の通勤時のこと。


「きゃっ!?」

駅の混み合っている階段で、私は後ろから誰かに突き飛ばされたのだ。

コンクリートの階段を転げ落ち、思いきり身体を打ち付ける。

幸いそれほど高い位置からではなかったのだけど、それでも足を強く痛めてしまい身動きが取れなくなってしまった。
 
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