イジワル上司と秘密恋愛

最近伸び代のいい業務用カクテルベースをさらに拡大させるのが、H&C事業部の上半期の目標のひとつだ。

今回はそのため新商品展開の先行説明会で、日本全国から多くの取引先が招待されている。

私も新しい商品の企画発案者として張り切っていたし、久しぶりの古巣にやってきたことでなんだか安心感を覚えていた。

「久しぶりだねえ、志乃ちゃん。元気でやってる?」

「野崎さん、お久しぶりです!」

こちらの事業所にいたときのメンバーとも顔を合わせることが出来て気持ちが弾む。物騒な事件に巻き込まれるようになって以来、心から安心して笑顔になれたような気がした。

そして、プレゼンの準備をして会議室へ向かおうとしたときだった。

「……春澤?」

私を呼びとめた声に懐かしさを感じて振り向くと、そこには……。

「ああ、やっぱり春澤だ。久しぶり」

「き、木下くん……?」

何回もごめんなさいを伝えて別れたあの日以来、久々に見る木下くんが立っていた。
 
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