イジワル上司と秘密恋愛
急に背後から声を掛けられ驚いて振り向くと、そこに立っていたのは新海課長だった。
「なんだ、さっきからずーっと後ろに居たのに、全然気付かなかったんか」
新海さんはケラケラと可笑しそうに笑ったけれど、私は驚きとどこか妙な不安に心臓を煩くさせていた。
「ビックリした……。いつからいたんですか?」
「ん? ずーっとだよ。さっきからずっと。春澤これっぽちも気付かないんだもんなあ」
……変なの。新海さんが気さくで冗談好きなのは知ってるけど、ずっと付いてきてたなんて、なんだか不気味なものを感じる。
「あの、私、部屋に戻りますので。お疲れ様でした」
そう言って頭を下げると、私はときどき後ろの様子を気にしながら急ぎ足で自分の部屋へと向かった。
綾部さんへの高鳴る想いと、なんだか得体の知れない不安な気持ち。
そのふたつの高鳴りは全然違うものの筈なのに、どうしてか私の胸の中ではそれがひとつに絡み合っている気がした。