イジワル上司と秘密恋愛

***

商品説明会、三日目。

会場準備をしていた私はエレベーター脇の通路に居た人影に思わず目をとめた。

だって、あの人は……。

不機嫌そうに腕を組み綺麗な顔をしかめながら新海課長と話しているその女性は——以前駅で見た、綾部さんの彼女だったのだから。

どうしてあの人がこんなところに? しかも綾部さんでなく新海課長と話しているだなんて。

私の頭は疑問でいっぱいになってしまう。

それになんだか彼女はとても機嫌が悪そうだ。新海さんの表情はここからだとよく見えないけれど、困ったように彼女をなだめているように見える。

不思議な光景についマジマジと見入ってしまったけれど、あまり注目していい状況ではなさそうだと思い、その場から目を逸らして立ち去った。
 
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