イジワル上司と秘密恋愛
『平成○年度上半期 社長賞 関西事業所 H&C事業部 企画マーケティング課 春澤志乃』
上半期の決算が済んだ翌週の朝礼で、私は綾部さんから直々に金一封の入った封筒と賞状を手渡された。
「今期の社長賞はH&C事業部からは三人も出た。しかも春澤はここに来て初めての決算での受賞だ。わずか半年で四つもの企画を通し新商品に結びつけたことが大いに評価された。先日の商品説明会でも新商品の予約状況は好調で、彼女の実績は今回の受賞に充分価する。おめでとう、春澤」
まさか夢にも思っていなかった光栄に、私は自分のことなのに信じられずしばらくポカンとしてしまった。
すると、なかなか封筒を受け取らない私に綾部さんはクスリとおかしそうに口元を綻ばせると、
「よく頑張ったな」
と、優しく穏やかな声で褒めてくれた。
そのあたたかい言葉がだんだんと胸に染みていき、ゆっくりと実感が沸いてくる。
「あ……ありがとうございます。ご教授、ご鞭撻下さった部長はじめ皆様方のおかげです」
そう言って頭を下げるとフロアは拍手に包まれ、私は感激で胸が熱くなっていくのが分かった。