イジワル上司と秘密恋愛
9・そして愛を知る
【9・そして愛を知る】
十月の中旬。
H&C事業部の社員旅行当日は少し涼しいけれど晴天の旅行日和だった。
上半期に良い成績を残せたことも後押ししているのかみんなとてもリラックスした雰囲気で、移動のバスは和やかな雰囲気のまま走り続ける。
高速を使い順調に進むこと二時間。
バスは目的地である東海地区のとある山の麓へとやってきた。
「わあ、空気が美味しい〜」
駐車場に降りて、長い乗車で硬くなってしまった身体を思いきり伸ばす。
そのまま深呼吸をすれば自然の香りがする空気が肺をいっぱいに満たしてくれた。
ふと、私の横を人影が通り過ぎ視線を向ければ……それはカットソーにカーディガンを合わせたコーディネートの綾部さんだった。
——わ……綾部さんの私服姿、見るの久しぶりだな。
そんなことを思ってつい目で追ってしまった自分に気付き、慌てて視線を逸らす。
もう彼のことを想うのはやめようと決めたのに。
私の決意とは裏腹に胸はいつまで経ってもときめいたり痛んだりするのをやめてくれず、恋って手に負えないなあ、などと自分で自分の気持ちを持て余していた。
十月の中旬。
H&C事業部の社員旅行当日は少し涼しいけれど晴天の旅行日和だった。
上半期に良い成績を残せたことも後押ししているのかみんなとてもリラックスした雰囲気で、移動のバスは和やかな雰囲気のまま走り続ける。
高速を使い順調に進むこと二時間。
バスは目的地である東海地区のとある山の麓へとやってきた。
「わあ、空気が美味しい〜」
駐車場に降りて、長い乗車で硬くなってしまった身体を思いきり伸ばす。
そのまま深呼吸をすれば自然の香りがする空気が肺をいっぱいに満たしてくれた。
ふと、私の横を人影が通り過ぎ視線を向ければ……それはカットソーにカーディガンを合わせたコーディネートの綾部さんだった。
——わ……綾部さんの私服姿、見るの久しぶりだな。
そんなことを思ってつい目で追ってしまった自分に気付き、慌てて視線を逸らす。
もう彼のことを想うのはやめようと決めたのに。
私の決意とは裏腹に胸はいつまで経ってもときめいたり痛んだりするのをやめてくれず、恋って手に負えないなあ、などと自分で自分の気持ちを持て余していた。