イジワル上司と秘密恋愛

伝統工芸品のコースでは見学のほかに、茶碗の絵付けや地元で織られた和紙を使って名刺が作れる体験コーナーもあった。

せっかくなので私も茶碗の絵付けに挑戦してみる。

真剣に青い絵の具で模様を描いていると。

「なんかその水玉模様、どっかで見たことあるな。なんとかポタリーだっけ?」

「え? あ、綾部さん……!?」

なんと、ふいに後ろから綾部さんが声をかけてきた。

まさか話しかけられるなんて思ってもいなかったから動揺してしまう。

しかも今の話……もしかして、昔私の部屋に来たときのカップのこと?

色々とあまりにも意外すぎて、頭の中が上手くまとまらない。

すると綾部さんは「俺もやろうかな」と言って道具を取りにいくと、私の隣の席へと腰を降ろした。

こんな思いもしなかった展開に、胸がうるさいくらい高鳴ってしまう。

馬鹿な私。綾部さんは結局、私のことなんて遊びだったって分かったはずなのに。

なのにそれでも……胸は熱くて痛くてたまらない。
 
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