イジワル上司と秘密恋愛
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「春澤ちゃん、どうかした? なんか今日ボーっとしてるね」
「え、あ、うん。そんなことないよ」
夕食の宴会の席で、うっかり箸の止まってしまった私に片桐さんが心配そうに声をかけてくる。
あのキス以降、私はまるで熱に浮かされたようにボーっとしてしまって何をするにもうっかり手が止まってしまう。
「大丈夫?」と気遣ってくれる片桐さんに「うん」と笑顔を向け、再び料理に手を付け出した。
「この焼き物美味しいね」
「たれに昼間行った酒蔵の酒かすが使われてるんだって」
「へー、やっぱり日本酒あなどれないなあ」
そんな和やかな会話を交わしながらも、視線はついつい綾部さんを追いかけてしまう。
私からは離れた斜め向かいの席。男女とも色々な社員と楽しそうに会話しながら、お酒を酌み交わしている。
箸を持つ指先、飲み物を飲み込む喉もと、誰かを見やるときの視線の動き、彼のしぐさの全てが目に焼き付けたくなってしまうほど愛おしい。
けれどそれと同時に、どうしようもない切なさも込み上げてくる。