イジワル上司と秘密恋愛
そうして部屋をあちこち探索すること数十分。
ドアは開きそうにもないし窓は人が通るのが難しそうな大きさのものしかない。
どうやら一階にポツリとあることを考えると、ここは客室ではなく従業員の仮眠室か何かのようだった。
「参ったな……。朝になって明るくなってから探したほうがいいかも」
そう嘆息して、ベッドに仰向けに寝転んだときだった。
「え?」
目に飛び込んで来た大きな脱出口に呆気にとられる。けれど。
「……なにか道具がなきゃ無理か」
私は天井に大きく開いた穴を見つめて溜息を吐いた。
部屋の天井は崩れ落ちていて、まるで二階からのふきぬけになっている。そこからなら抜け出せそうだけど、なんせ高さが問題だ。脚立か何かがなければ届きそうにない。
一旦はあきらめたけれど、もしかしたらスマホの電波状況なら少しは良くなるかもと思い、片っ端から電話番号をタッチしては素早く腕を伸ばして天井に近づけた。
けど、時々一瞬だけ電波が繋がるものの通話が出来るような状態ではなく、結局私はあきらめることにした。