イジワル上司と秘密恋愛

大人しくしていると静寂が余計に感じられ、心細さが増してくる。

「誰か助けて……綾部さん……助けて……」

ベッドに腰掛け膝を抱えて顔を突っ伏し、涙を滲ませながらひとり呟いた。来るはずがないと分かっていても、どうしても綾部さんの名前を呼んでしまう。

けど、私にとってやっぱり一番頼れて側にいて欲しい人は綾部さんただひとりなんだと、強く痛感した。

そのとき。

「……ん?」

なにか物音が聞こえた気がして、私は慌てて顔を上げた。

慎重に耳を澄ませてみると、どうやら窓の外から聞こえてくるらしい。

急いで窓に駆け寄って、割れたガラスの隙間から表を覗いた。

すると、誰かがスマホのライトを頼りに建物に近付いてくるのが見えた。

まさか、誰か助けに来てくれた? それとも……もしかしたら犯人が私を殺そうと戻ってきたのかもしれない。

ほのかな希望と背筋も凍るような恐怖が私の中でせめぎあう。

けれど——どうやら神様は私を見捨てないでくれたらしい。
 
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