イジワル上司と秘密恋愛
ガチャガチャと施錠と鎖が解ける音のあと、開かれた扉の向こうに立っていたのは——
——険しい表情をした麻里絵さんと、新海さんだった。
「新海くん。どうして淳耶さんがここにいるのかしら。私はそんな指示をした覚えはないけど」
「ごめん! 本当にすまん、マリちゃん! 俺は春澤だけを閉じ込めたつもりだったんだけど」
「もういいわ、本当にあなたって使えない人ね」
「ごめん! 今度はもう失敗しないから!」
ふたりのやりとりを見つめて、私は驚きのあまり目を瞠ってしまう。
新海さんと会話しながらも一度も彼の方を見ようとしないマリさん。
そんな彼女に縋るように謝り続ける新海さんはあまりに情けなくて、いつもの課長の面影もなかった。
——なんだか、このふたりの関係が見えた気がする。
綾部さんは、新海さんがマリさんに惚れ込んでるって言ってたけど、これはもう好きとかそういうレベルじゃない。
ただマリさんの言うことに従って犯罪にまで手を染める新海さんは、もう心の麻痺した奴隷なんだと思った。