イジワル上司と秘密恋愛

身体の筋肉がいきなり麻痺してしまったみたいで力が全く入らない。

「麻里絵……!!」

怒鳴るような綾部さんの声が聞こえて、私は倒れこんだまま視線だけ動かすと、綾部さんが手に何かを持っているマリさんに掴みかかるところだった。

それを見て、私は彼女が手にしていたものがスタンガンだと気付く。

あれを押し当てられたんだと理解すると同時に、このひとたちがここへ何しに来たかも分かってしまって、ゾッと全身が総毛立った。

マリさんは綾部さんに抵抗したけれど、彼にスタンガンを使う気はないのかただ手を振り払おうとしている。

けど、マリさんからスタンガンを奪おうとする綾部さんを、新海さんが後ろから羽交い絞めにした。

「やあねえ、淳耶さん。レディに乱暴するなんてあなたらしくないわよ?」

新海さんに引き離された綾部さんに向かって、マリさんはスタンガンを見せつけながら飄々と笑う。

「麻里絵! いい加減にしろ! 春澤は関係ないって何度も言っただろ!!」
 
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