イジワル上司と秘密恋愛
さっきまで熟睡していたのが嘘のように、頭は完全に覚め身体中の熱が急上昇を始める。
そして、目で確認するまでもない。自分の肌に直に触れているシーツの感触。私……何も着ていない。
「……なんで……? 嘘でしょう……?」
事態のあまりの大きさに、ひとりで呟いた声が涙声になってきた。嬉しいとか悲しいとか、そんなんじゃなく、ただ衝撃過ぎて。
だって、私——初めてだったのに。
こんなにあっけなく、しかも全然覚えてないだなんて。
信じられないと考える頭と裏腹に、下腹部には証拠とばかりに鈍い痛みが残っている。
紛れもなく私……してしまったんだと自覚すると、鼻の奥がつんとして涙が滲んできた。
そして霞む視界に映る綾部さんの姿が、どうしようもなく私の心をかき乱す。
だって、綾部さんには彼女がいるのに。どうして私を抱いたの?
頭に過る純粋な疑問に答えはひとつしか浮かばない。
「ひどい……初体験を遊びで奪うなんて……」
あまりに残酷な答えに、私の目からはぽろぽろと涙が溢れてきた。