イジワル上司と秘密恋愛

「お腹がすいて死んじゃうのと、天井が崩れ落ちて潰されちゃうの、どっちが早いかしらね?」

ゾッとするような笑みを浮かべて言われ、大声で悲鳴をあげたかったけれど身体がまだ麻痺していて声すら出なかった。

「じゃあね、お嬢さん。ごきげんよう」

そんな冗談まがいの挨拶を残して、マリさんは部屋から出て行く。

「新海離せ! やめろ麻里絵!! 春澤を離せ!!」

新海さんに連れられ、綾部さんは必死に抵抗するけれど両手が塞がっている状態では思うように動けない。

——誰か助けて……! このままじゃ綾部さんが連れて行かれちゃう……! お願い、誰か!

涙を浮かべ必死に祈ったけれど、ついに綾部さんは部屋から出され扉の閉まる音と共にガチャガチャと施錠の音が聞こえる。

それを耳にして私は動けない身体で目の前が真っ暗になるのを感じた。


——ところが。
 
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