イジワル上司と秘密恋愛
「それでも大人になってからは随分と落ち着いて父の会社で働くようになったんだけど、最近また様子がおかしいって関西で同居している両親から連絡があったんだ。何か危ないことに手を染めてるようで……どうやらそれに春澤が巻き込まれてるらしいって気付いたのは、先月の関東での説明会の時だよ」
木下くんの言葉に、関東事業所で行われた説明会のことを思い出す。
そう言えばあのとき会場には木下くんもマリさんも来ていた。今ここにいるのと同じ五人のメンバーが揃っていたんだ。
「……あのとき、春澤に言えば良かったんだ。うちの異常な姉がお前を狙ってるから気をつけろって。でも、出来なかった。……春澤に危害を加えてるのが姉だなんて知られたら嫌われるんじゃないかと思って、言えなかった……ごめん」
その言葉を聞いて、隣の綾部さんが表情を変える。明らかに怒りを滲ませた表情で、
「そんな身勝手な理由で志乃を……!」
と言いかけたけれど、ぐっと口を引き結んで言葉を噤んだ。そして、
「人のことは言えないか」
とボソリと呟いて前髪をうっとおしそうに掻き上げた。