イジワル上司と秘密恋愛
「よしよし、いい子だなーマリは」
綾部さんは本当によくマリリンを可愛がってるのだけど……トカゲ相手とはいえちょっと妬けてしまう。
「どうせ私は虫も触れないし、いい子じゃありませんよーだ」
拗ねて背中を向けてしまうと、クスクスと可笑しそうに笑う綾部さんの声が聞こえた。
「志ー乃。何いじけてるんだ?」
「いじけてません」
「うそつき」
「ウソじゃないもん」
「意地っ張り」
「……綾部さんなんか嫌い」
ふてくされて顔を背ければ、優しく頬を包まれて綾部さんの方を向かされたあげくキスされてしまう。
「可愛いね、志乃」
唇に、鼻先に、掬った髪束に。綾部さんはキスと一緒に愛の言葉を綴っていく。
「愛してる。好きだよ、志乃」
私を映す怜悧で甘い光を湛える瞳。心も身体も蕩けさせる艶やかな声。
素直にその愛に翻弄されれば、ウソのつけない言葉が口から零れた。
「……大好き、綾部さん……」
「俺も大好きだよ」
綾部淳耶(あやべじゅんや)さん。八つ年上で私の上司で恋人。いつも冷静で、私に特別優しくて。
そして、私を弄ぶ誰より愛しい人。
【END】