イジワル上司と秘密恋愛
ホテルは昨日のダイニングバーからそう遠いところではなかったので、道に迷う心配がない事に安堵しながら、まだ人の少ない地下鉄に乗って家路へと向かった。
閉塞感の漂う地下鉄の隅っこの席に座り力なくうなだれて、これからどうするかを考える。
綾部さんと寝てしまって、私はこれから一体どうすればいいんだろう。綾部さんはこれから私をどうするつもりなんだろう。そして、どうして浮気相手に私なんかを選んだんだろう。
……ああ。出来る事なら時間を巻き戻したい。あんなに酔い潰れなければ、きっとこんな事にはならなかったのに。
ううん、飲みに誘われたとき断れば良かったんだ。ふたりきりでお酒が飲めるなんて浮かれていた自分を叱りたい。
いくら考えたって情けない後悔とこれからの不安ばかりがループして、何ひとつ明るい答えが出てこない。
目の前が真っ暗になったような気がして深く溜息を吐くと、鞄の中でスマホのライトが点滅していた事に気が付いた。