イジワル上司と秘密恋愛
シャワーから上がると一件の不在着信と留守番電話の通知がスマホに届いていた。
『もしもし、綾部です。……体調不良で欠勤だって聞いて驚いてる。……俺のせいだよな、ごめん……。あの、またあとで連絡する』
忙しい隙をぬって掛けてくれたんだろう、短いメッセージだったけれど、それは私の胸を嫌というほど切なく締め付ける。
いつも余裕を感じさせる綾部さんが本気で戸惑ってるように感じた。『ごめん』の響きは昨日と同じ本当に申し訳無さそうで、メッセージ全体からはどうしていいか分からない子供みたいな焦燥が滲んでいる気がした。
——まるで、私を本気で心配してるみたい。
またしてもそんな馬鹿な錯覚を覚えてしまう。
「違う。そんなはずないって」
たかが遊びの一夜なのに、私が大げさにしてしまわないかと危惧してるだけだと、首を横に振って必死に現実を見ようと努力した。
なのにそれでも、馬鹿な夢を見させてくれるそのメッセージが嬉しくて、私は繰り返し留守番電話の再生をタッチしてはスマホを耳に強く押し当てた。