イジワル上司と秘密恋愛

***

けれどやっぱり、現実は残酷だ。

『またあとで連絡する』の言葉は果たされる事なく、時間は刻々と過ぎていく。

午前が終わり、お昼を過ぎ、まもなく終業の時間を迎える夕刻。私の一日はテーブルに置いたスマホとのにらめっこで終わってしまった。

……何を期待していたんだろう。

部屋でひとり膝を抱えて座りながら、窓から差し込む西日に目を眇める。

外からはツクツクホーシの耳障りな声とジットリと生ぬるい風が入り込んできて、そのあまりの気だるさに潰されてしまいそうになる。


もし電話が掛かってきたところで、きっと私の望まない話をされるだけなのに。

『昨日の事は誰にも秘密にしておいて欲しい』『お互い大人なんだから割り切ろう』

そんな風に悟されるに決まっている。だったら、このまま何の連絡も無い方がマシだ。


私はその場に立ち上がって大きく深呼吸をすると、時間が経ってようやく冷静になってきた頭で考え直した。

 
< 33 / 239 >

この作品をシェア

pagetop