イジワル上司と秘密恋愛
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けれどやっぱり、現実は残酷だ。
『またあとで連絡する』の言葉は果たされる事なく、時間は刻々と過ぎていく。
午前が終わり、お昼を過ぎ、まもなく終業の時間を迎える夕刻。私の一日はテーブルに置いたスマホとのにらめっこで終わってしまった。
……何を期待していたんだろう。
部屋でひとり膝を抱えて座りながら、窓から差し込む西日に目を眇める。
外からはツクツクホーシの耳障りな声とジットリと生ぬるい風が入り込んできて、そのあまりの気だるさに潰されてしまいそうになる。
もし電話が掛かってきたところで、きっと私の望まない話をされるだけなのに。
『昨日の事は誰にも秘密にしておいて欲しい』『お互い大人なんだから割り切ろう』
そんな風に悟されるに決まっている。だったら、このまま何の連絡も無い方がマシだ。
私はその場に立ち上がって大きく深呼吸をすると、時間が経ってようやく冷静になってきた頭で考え直した。