イジワル上司と秘密恋愛

——なかった事にしよう。このまま綾部さんの浮気相手にもセフレにも、なるのは嫌だ。昨日の事はお互いの過ちだって認めて、明日からはいつも通りの私に戻ろう。

こんな形で処女を失ったショックは癒えないけれど、それは胸の奥深くにしまうしかない。

それぐらい思い切って割り切らなくては、私は彼に囚われ過ぎて身動きが取れなくなると思った。

いつまでも綾部さんと顔を合わせるのを避ける訳にもいかないし、グズグズと悩んでいたっていいことは無いのだから。


私は無理矢理に自分を元気付けると、その場で大きく伸びをしてから出かける準備を始めた。

部屋に閉じ篭っているから余計にネガティブになってしまうんだ。何か美味しいものでも食べに行こう。

明日からの元気を蓄えるために。痛い勉強をした自分を少しだけ慰めてあげるために。

私はメイクを済ませると、プライベート用のお気に入りの鞄にお財布を移して、閉じ篭っていた部屋を後にした。

 
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