イジワル上司と秘密恋愛
「どうして……」
私の頭の中はそのひと言で埋め尽くされる。どうしてここにいるの。どうしてここに来たの。どうして。
馬鹿な期待と、きっとそれは裏切られるだろう予感。
私は足を竦ませてその場に立ち尽くしてしまった
「出かけてたのか?」
こちらの躊躇いなど気にもせず、綾部さんは私の腕の中のショッピングバッグに目を留めると率直に尋ねてきた。
病欠のはずなのに買い物なんかに出たところを上司に見つかったという気まずさが、私の中に新たに芽生える。
「あ……すみません、少し調子よくなったから外でご飯食べてきて、そのついでに……」
叱られるかと思い、オドオドとした小声になってしまった。
けれど、綾部さんはふっと口元を緩めるとこちらに近付いてきて私の間近で足を止める。