イジワル上司と秘密恋愛
下着姿になった身体をベッドに横たわらせられ、私はそっと目を閉じる。
シーツに広がった髪を指で撫でられると、心の底から彼への愛しさが湧き上がった。そして。
「志乃」
掠れるような吐息交じりの声が呼んだとき、私の手が彼の背中のワイシャツを強く掴んだ。
「綾部さん……」
——『好き』と零しそうになる唇をきゅっと噤む。
言ってはいけない。この人は他の女(ひと)のものなのだから。
ひとときの悦楽のために私を抱きに来たこのひとに、愛の言葉なんか告げたら自分が惨めになるだけだから。
けれど、渇くように私の喉は愛を伝えたがって、与えられる刺激から零れる吐息の合間に想いが漏れそうになってしまう。
「あ……っ、ん……綾部さん……」
「志乃、可愛いよ」
「や……、あ、……綾部さん……綾部さん……っ」
ぎゅっと広い背中を抱きしめ、最後に残った自分を守るプライドでうめくように伝える。
「綾部さんなんか……大嫌い……」