イジワル上司と秘密恋愛

一瞬、耳朶を愛撫していた唇が止まった。

それから数秒の後、密着していた身体が離され、上半身を起こした綾部さんが驚いたような表情で私を見下ろす。

けれど、そこから先は思っていた反応と違った。

綾部さんは怒ることも呆れることもせず、眉尻を下げて苦笑を浮かべると

「好きだよ、志乃のそういうところ」

耳を疑うような台詞を言って、私の額に口付けた。

「意地っ張り」

今度は可笑しさを滲ませた声色で囁きながら耳にキスをする。

「……んっ、意地っ張りじゃ……ない……っ」

「素直じゃない」

「や……、す……なおだもん……あっ」

綾部さんの手が私の髪を撫で頬を撫で、首筋を撫でていった。温かな手に愛でられた身体が嬉しくて鼓動を早めていく。

 
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