イジワル上司と秘密恋愛
改めて怒られるんだろうか、そんな風に構えてしまった私に綾部さんは、意外な言葉を口にする。
「来週の休み、温泉行こうか」
「……えっ」
「近場だけどさ、一泊旅行」
口角を少しだけ上げた静かな笑み。その表情に向き合って私は自分の胸が嬉しさに昂ぶるのを感じてしまった。
きっと顔にも出てしまったのだろう。頬を紅潮させて目を輝かせてしまったのかもしれない。
綾部さんはそんな私を見つめて、どこか満足そうに目を細めた。
そして、「行く?」と改めて確認を取る。こちらの瞳を覗き込むようにして。