イジワル上司と秘密恋愛
——行きたい、綾部さんと一泊旅行。
自分のおかれてる立場も忘れて頷きそうになったとき。
「じゃあこれは消してな」
膝の上でスマホを握りしめていた私の手に、滑らかな感触の手が重ねられた。
さっきまでドリンクのグラスを持っていたからか、ヒンヤリとした冷たさが大きな手の平から伝わる。
身体の奥がゾクリと震えたのは、冷たい手のせい。それとも、怜悧な光を宿した眼差しに射られたせい。
じっと見つめ続ける綾部さんの瞳に映る私は、嬉しそうにも泣き出しそうにも見える表情で、小さくコクリと頷いていた。