イジワル上司と秘密恋愛

***

「志乃。ほら、俺の分のデザートあげるよ。アイス好きだろ」

「そんなに食べられませんよ。それにアイスじゃなくてジェラートって言って下さいよ」

「はいはい、オッサンですいません」

部屋でとった夕食も、旅館の料理が美味しいのはもちろんだけど、私にはなんだかいつもの十倍も二十倍も美味しく感じられた。

じゃれあうような会話を交わしながら箸を進めているうちにお皿はすっかり綺麗になって、デザートのジェラートはお互い食べさせ合いながら最後は戯れのキスでその甘さを共有した。


——何度抱いても抱き足りない。

——何度抱かれても抱かれ足りない。


ふたりともそんな餓えた声が聞こえてきそうな夜だった。

ずっと一緒にいたのに、色んな場所で何度もキスを交わしたのに、お風呂で熱く抱き合ったのに、それでも足りないと。

 
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