イジワル上司と秘密恋愛

***

月曜日の昼。

浅はかにもまだどこか夢心地を捨てきれないでいた私の耳に、賑わう社員食堂である会話が飛び込んで来た。


「綾部、最近“マリ”ちゃんどう?」


ふっと呼吸を塞がれたような、胸が詰まる衝撃が私を襲った。

動揺を出さないように必死に抑え込んで、視線だけを声のした方に向ける。

私のテーブルから斜め前に見える食器の返却口。そこに並びながら綾部さんと……同期の友達だろうか、他の課の男性が楽しそうに会話している姿を見つけた。

人が多くざわつく食堂内で、必死に耳を澄ます。


「ああ、元気だよ」

「そっか、相変わらず大事にしてるんだ」

「まあな。ほんとあいつ可愛いよ」


綾部さんの弾んだ声。

私の胸が嫌な動悸を高鳴らせ、酸欠みたいに頭がまっしろになっていく。

 
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