イジワル上司と秘密恋愛
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月曜日の昼。
浅はかにもまだどこか夢心地を捨てきれないでいた私の耳に、賑わう社員食堂である会話が飛び込んで来た。
「綾部、最近“マリ”ちゃんどう?」
ふっと呼吸を塞がれたような、胸が詰まる衝撃が私を襲った。
動揺を出さないように必死に抑え込んで、視線だけを声のした方に向ける。
私のテーブルから斜め前に見える食器の返却口。そこに並びながら綾部さんと……同期の友達だろうか、他の課の男性が楽しそうに会話している姿を見つけた。
人が多くざわつく食堂内で、必死に耳を澄ます。
「ああ、元気だよ」
「そっか、相変わらず大事にしてるんだ」
「まあな。ほんとあいつ可愛いよ」
綾部さんの弾んだ声。
私の胸が嫌な動悸を高鳴らせ、酸欠みたいに頭がまっしろになっていく。