イジワル上司と秘密恋愛
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『具合は大丈夫か?』『さっきはキツい言い方してごめん』『仕事終わったら部屋に行く。欲しい物あったらラインして』
帰宅してからすぐにスマホを鳴らしたラインのメッセージは、さっき私を叱った人からのもの。
真っ先に体調を心配してくれる言葉が、素直な『ごめん』が、私を甘やかしてくれる言葉が、今は苦しくて悲しくて涙しか出てこない。
私は着替えもせずそのままベッドに飛び込み、流れるままに涙を零し続けた。
綾部さんには本命の彼女がいて、私はしょせん浮気相手なんてことは全部はじめから分かっていたことなのに。
それでも、意地を張りながらでも、そばに居ることを結局選んでしまっていたのは自分なのに。
昨日までがあまりに幸せだったから、改めてつきつけられた現実が痛すぎて。
それに何より……“マリ”さんはただの恋人じゃなくって、もう綾部さんと家庭を作る計画をしてる、実質婚約者だという事実が私の胸を抉った。