イジワル上司と秘密恋愛
5・叶えられた願い
【5・叶えられた願い】


「……改めて、ごめんなさい。あんな連絡の絶ち方しちゃったこと、悪いと思ってた」

自宅から五百メートルほど離れたカフェで、私は窓際のテーブルに席を取り、木下くんと向かい合って話をした。

「悪いと思うなら理由を教えて欲しい」

木下くんは大きな口を今日はきつく引き結び、こちらを強く見据える。

彼の怒りがひしひしと伝わるようで、私は視線をテーブルの上のハーブティーに落として口を噤んでしまった。

……お見合いをして、そのあとの約束も受けたのは私だもの。彼にちゃんと説明する義務がある。

けれど——。

「……ごめんなさい」

綾部さんのことを打ち明けることが出来なくて、唇は謝罪を重ねることしか出来ない。

理由を言わない私に、木下くんが苛立ちをあらわにした口調で言ってきた。

「どうせ男だろ? 元カレ? それとも東京戻ってからすぐに新しい彼氏が出来て、俺とは会いたくなくなった?」

 
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