イジワル上司と秘密恋愛
「……ちがうの。ごめんなさい。私が悪いって分かってる。だって……」
——誰にも言えない。
本当はそれはとても辛いことだった。不安を吐き出すことも相談することも出来ず、初めてで分からないことだらけで、どうしていいか途方に暮れても誰にも言えなかった恋。ひとりぼっちで泣いてばかりいた恋。
けれど、もう……限界。
「私……会社の上司と付き合ってるの。でも、彼には結婚を前提に付き合ってる彼女がいて……私は浮気相手だから、誰にも言えなくて……」
誰かを傷つけて自分も傷ついて。泣いて逃げるばかりの恋に終止符を打とうと思った。
人の恋人に横恋慕した私は誰に責められても文句は言えない。きっといっぱい叱られる。
そして綾部さんも、もしかしたら大切なものを失うかもしれない。
けれどそれでも、私は木下くんに謝らなくちゃいけないし、もうこんな不毛な関係は終わりにしなくちゃいけないと思うから。