イジワル上司と秘密恋愛
「彼のこと振り切って、木下くんと真面目に交際しようって考えた。でも、結局彼が好きで離れられなくて……ごめんなさい。私、あの人の浮気相手でいることを望んで、木下くんとの繋がりを断とうとした」
全てを打ち明けてしまった私に、木下くんは驚きの表情を見せたあと黙りこくってしまった。
きっと幻滅しているんだ。せっかく偶然再会した片思いの相手が、汚い恋愛をしていたことに嫌悪を感じているに違いない。
「本当にごめんなさい。こんな私のこと好きだって言ってくれて嬉しかった。ありがとう。なのに……こんなずるい女で、本当にごめん」
完全に嫌われてしまっただろうと思ったから、私は椅子から立ち上がり申し訳なかった気持ちを籠めて深々と頭を下げると、そこから立ち去ろうとした。けれど。
「待って」
複雑そうな表情をしたまま、木下くんが立ち上がって私の腕を掴んだ。
「そんな話聞かされたら、ますます春澤のことあきらめられない。言っただろ、俺本気だって」
「でも……」
意外過ぎる彼の言葉に、驚いて見開いた私の瞳から溜まっていた涙が零れ落ちていく。
それを不器用に親指で拭いながら、木下くんは真剣な眼差しを向けて言った。
「俺が救い出してやるよ、そんな泥沼みたいな恋から」