ベナレスからの手紙

急死?

久しぶりの歓談の後、義姉が1枚の封筒を持ってきた。
70年12月の消印だ。差出人は児玉尚也。

小学校時代のまとめ役で同窓会の幹事をやっている
小児科の医者だ。すぐに封を開けてみる。

同級生の柴山杏子が急死した。葬儀は云々と書いてあった。
柴山杏子と言えば、控えめではあるがテニスは県大会に
出るほどの腕だった。あの杏子が?病気で急死とは?

7年ぶりに児玉に電話した。
「ああ、急性の白血病で入院して3か月。葬式には広島に
いる川合、土本、山田と宮本さん、増田さん、折出さん。
よく見ると美人だったよな柴山」

「で?」
「親父さんに『若林さんは?』て聞かれて、
『あいつ海外行ってて3年は帰ってきません』と答えたら、
『3回忌にはぜひお会いしたい』と言うんだ」

「3回忌?」
「ちょうどこの20日が3回忌だ」
「ああ、もちろん行くよ」
「わかった。みんなにも伝えとくよ」

児玉たちとは小学校の4年の時から一緒で杏子もその一人だった。
各学期ごとに学級委員を投票で決めた。1学期は優等生の福田と
美人の大辻さん。2学期は美男子高祖と増田お嬢様。3学期が
若林と柴山さんだった。柴山さんは無口で控えめだが成績は優秀。

そうしたある日、でしゃばりの宮本さんから付文をもらったことがある。
開けてみると「若林君は柴山さんのことが好きですか?」と書いてあった。
なんだこれと言って返事もしなかった。
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