ベナレスからの手紙
幼馴染
こんなこともあった。ホームルームの時に黒板の前に立って
何かの評決をとるときだったと思う。柴山さんは後ろで黒板に
賛成1反対1と正の字を書いていく。若林が一つ一つ読み上げ
ていくのだが、一つ聞き取りにくくて柴山さんが「え?」と
言って耳に手を当てて顔をよせて聞いてきた。
振り返ると彼女の耳元に触れた。「賛成一」と大きくつぶやくと
誰かが「ようっ!」と言ったとたん冷やかしの拍手になった。
二人は顔を真っ赤にして評決を続けたことを思い出す。
またある日クラス費で画用紙を買った帰りに近くだからと彼女の
家の前を通った。ちょうど親父さんが表に立っていて、お店には
柴山洋装店と書かれていた。仕立て屋さんだったと思う。
「おー、学級委員の若林治君か?」
「あ、はい」
側で柴山杏子が恥ずかしそうにふたりの会話を聞いている。
「大きくなったらなんになるんだ。若林君?」
「京都の大学の工学部に入ってロケットの博士になります!」
大きな声でこう言ったのを今でもはっきりと覚えている。
大声で笑ったニコニコ顔のあのおやじさんか・・・・・。
何かの評決をとるときだったと思う。柴山さんは後ろで黒板に
賛成1反対1と正の字を書いていく。若林が一つ一つ読み上げ
ていくのだが、一つ聞き取りにくくて柴山さんが「え?」と
言って耳に手を当てて顔をよせて聞いてきた。
振り返ると彼女の耳元に触れた。「賛成一」と大きくつぶやくと
誰かが「ようっ!」と言ったとたん冷やかしの拍手になった。
二人は顔を真っ赤にして評決を続けたことを思い出す。
またある日クラス費で画用紙を買った帰りに近くだからと彼女の
家の前を通った。ちょうど親父さんが表に立っていて、お店には
柴山洋装店と書かれていた。仕立て屋さんだったと思う。
「おー、学級委員の若林治君か?」
「あ、はい」
側で柴山杏子が恥ずかしそうにふたりの会話を聞いている。
「大きくなったらなんになるんだ。若林君?」
「京都の大学の工学部に入ってロケットの博士になります!」
大きな声でこう言ったのを今でもはっきりと覚えている。
大声で笑ったニコニコ顔のあのおやじさんか・・・・・。