好きでいてくれと願う
「私と違って竜士はあれだ、ややツンデレだけれど女子にはそれなりに優しいし、勉強だって体育だってできるし、お母さんは優しいし、さりげに手伝ってくれちゃうのとか、休んだ日のノートとってくれたりとか、些細な優しい部分が沢山あるもんね。そういうのいいなぁって思う。大っぴらに優しいだけじゃ男はダメよ。竜士みたいな感じが私は好きだな」
握っていたシャープペンに力が入っていたらしい。ノート上に滑っていた芯が派手な音をたてて折れた。
俺はというと風邪をひいたんじゃないだろうか。そう思うくらい暑くて、顔をふせると「お、おい竜士」という声にか細く返事をするのが精一杯だなんて。
お前、わかってんのか?
自分で何をいってるのか。
聞いててなんというか、こっぱずかしいだろうが。
「あ、あと身長も高いし英語得意だよね」
「……おい、少しの間黙っててくれよ。頼むから」
「えー、せっかく良いところを言ってるのに」
「いいから。ほら、集中出来ねえだろうが」
「はいはいわかったよ」
―――それ、告白みたいだぞ。
自意識過剰かもしれないが。いや、それだったら俺はかなりアホだけど、さ。それでもちゃんと俺を見ていてくれている、ってのが嬉しくて。
そうやって無意識に俺をおちょくってんなら、上等じゃねえか。俺だってやるときはやる。いつかぜってー告白してぎゃふんと言わせる。決めた。首洗って待ってろよ。
だがな、だが…。
大人しくなった真由子を見て、俺のこと好きでいてくれよと願う。
了
15/7/16