黙って抱きしめられてろよ。
「大丈夫?ほら、つかまって?」
どんよりした気持ちのまま放心状態に陥っていた私。
痛いなぁなんて呑気に考えていると、頭の上からなんとも優しい声が聞こえた。
顔を上げると当たり前のように黒須くんの姿があって。
左腕がさっきの声の持ち主に絡められたまま、右手をこちらに差し出してくれていた。
…なんで心が広い人なんだろう。
こんな惨めな私を気遣って手まで差し伸べてくれるなんて。
私がその立場ならきっと見て見ぬ振りを…って!