俺の彼女がかわいくない
「斎藤くん…」

先に声を発したのは安子だった。意外とかわいい声をしていた。
おれは安子の声をはじめて聞いたような気がした。たしかにクラスがおなじだとはいえ、陰湿な安子がしゃべる機会はすくなかったし、しゃべったときも特に注意を向けたことがなかったからであろう。

ブスでも声は女なんだな。まあ、この声にみあった顔ではないがな。

「あ、あのこの手紙を書いたのは齊藤くん?」

そういって安子はスカートのポッケにはいっていたくしゃくしゃの紙切れを取り出した。

「ああ、俺だよ」

しばらくの沈黙があった…それもそうだろう。いままで話すことさえしなかった俺に突然よびだされたのだからびっくりするのも当然だろう。とはいっても安子の場合、クラスの誰に呼び出されても驚いていたであろうが…

「で、な、なにか用事があったから私を呼んだんだよね…」

なにも言わない俺にしびれを切らしたのか、安子はおれに次なる言葉を求めてきた。
おれはわざとらしく深呼吸をした。そして言った。
「好きです。付き合ってください。」と
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